皆さんは手ぬぐいと聞いてすぐにイメージが浮かびますか?
「言葉としては知っているけれど詳しくは全くわからない」という方も多くいらっしゃるんじゃないでしょうか。
よくある利用シーンとしては、温泉で湯船に使っているときに頭に乗せている布、それが手ぬぐいです。
手ぬぐいは古くからあるものという認識の方が多いと思いますが、実際にいつから使われていたものかご存知の方は少ないと思います。
書物などで確認できるだけでも平安時代にはすでに存在し、明治時代にハンカチやタオルが一般化するまで使い続けられてきました。
手ぬぐいは、ハンカチやタオルと同じような使われ方をしていたほか、魔除けの効果があるとして頭から被ることも多かったそうです。
これがどじょうすくいの被り物のルーツと言われています。
また、生地が薄く滑らかだったため、各地方で染め物のベースとしてもよく用いられており、染め物文化の立役者でもあります。
先に述べた通り、現代においてはハンカチやタオルなどに押されてしまい、どこでも手に入るわけではなくなってしまいました。
しかし、手ぬぐいならではの風合いと使い心地から近年、再度注目が集まってきています。
最近では100円ショップなどでも可愛らしい柄のものが売られていたりするので目にされる機会も増えたのではないでしょうか?
認知が高まり、かつ手に入りやすくなった現在は、独特の風合いと使い勝手の良さから、ノベルティとしてもよく使われます。
目の前にパッと手ぬぐいを出されたとき、すぐに判別できますでしょうか?
手ぬぐいとして販売されているものの中には「どう見てもタオルだ」というものもあります。
それでは一体手ぬぐいとはどのようなものを指すのでしょうか?
特徴として挙げられるのはサイズです。
ほぼ統一で 約90cm×35cm 程度のものが手ぬぐいと呼ばれます。
また、生地に関しては、木綿素材を平織り(縦横に縫っていくとてもシンプルな織り方)の布とされています。
ところが、近年では同じく綿素材のタオル地のものも、上記のサイズであれば手ぬぐいと呼ばれることがあります。
このような兼ね合いから、日本古来からある手ぬぐいは「日本手ぬぐい」、タオル地のものは「手ぬぐいタオル」と呼び分けられています。
つまり大きさが規定のサイズで、綿素材であれば広い意味で手ぬぐいとされています。
今回はタオル地のものではなく、昔ながらの日本手ぬぐいにフォーカスしてお話しを進めていきます。
手ぬぐいと一言に言っても生地や柄が多数あり、古くから使われている分、独自の規格や伝統的な柄が存在します。
生地は大きく分けて2種類に分類されます。
いわゆるパターン柄です。そのままでも、プリントを施す場合でも、ベースとなる部分なので、代表的な柄をご紹介します。
タオルやハンカチの普及により手ぬぐいは一気に利用者が減ってしまいました。
現在では毎日使用するという人は少数派になりました。
しかし、抜群の使いやすさから、日常的には使わずとも特定の用途で現在でもニーズがあります。
一体どんな使われ方をしているのでしょうか?
カンカン照りの真夏日、汗を拭うためにタオルやハンカチを持ち歩かれている方は多いかと思います。
暑い夏場に荷物は最小限にしたい。汗を拭くためにタオルを持つけれど、かさばるのは避けたい…そんな時にお勧めしたいのが手ぬぐいです。
日本手ぬぐいの一番の特徴は、薄さと速乾性です。
タオルと同じ綿素材のため、汗を拭えるのは勿論。タオルに近いサイズでも、折りたためばハンカチくらいのサイズになります。
生地は薄いですが、吸水性はタオルに並ぶほど高いため全く問題ございません。
タオルよりも速乾性が高く、汗を拭っても長く湿気を保持しないため、不快感も全然感じさせませんね。
ハンカチ並のコンパクトさと、タオルと並ぶ利便性、さらに速乾性も高いという、それぞれのメリットが集まっています。
剣道では昔から一貫して手拭いを頭に巻くのですが、それはこの「薄くて速乾性が高い」という特性のためであり、タオルに置き換えられていない理由の一つです。
こちらも比較的メジャーな使い方ではないでしょうか?
そもそも「ふきん」には手ぬぐいも含まれる場合がありますが、今回はそれ以外のタオル地やレーヨンなどと比較します。
手ぬぐいも、その他のふきんも吸水性に関しては十分に高いのですが、ここでもやはり速乾性が鍵です。
キッチン周りでふきんを使うといえば、汚れを拭く、洗い上がりの食器を拭く、調理器具を拭く…というのが主な活用方法だと思います。
どれも多分に水分を拭き取るので、よほどびしょびしょのまま拭くのでなければ、どの素材のふきんでも役不足はありません。
問題は拭き取った後です。
手ぬぐいはその乾きやすさから雑菌が繁殖する前にどんどん水分が乾いていきます。一方他の素材は、物によっては水切れが悪かったりするため、その間に雑菌だらけになってしまいます。
「毎食ごとに新しいのを使ってるから問題ない」という方もいらっしゃるとは思いますが、1日1枚ペースで交換するのなら経済的にも手ぬぐいを是非お勧めします。
ふきんとしての用途のために買い揃えるなら、生地は総理・文生地のものが最適です。
こちらは少しマイナーな使い方かもしれません。
手ぬぐいはタオル地などと異なり、平織り布なので比較的表面の凹凸が少なく、印刷や染めが非常に映えるという特徴があります。
ご自身で作られる場合にも検討材料に入れていただければと思いますが、なによりこの特徴のおかげで、デザインに優れた既製品も数多く販売されています。
また旅行の際にも、その土地の伝統的な染め上げを行った逸品をお土産として購入できるケースも多々あります。
そのようなデザイン性の高い手ぬぐいはせっかくだから飾ってしまおうという活用方法です。
インテリア活用の中でも特にお手軽で人気が高いのは「のれん」と「ファブリックパネル」、「タペストリー」です。
◆のれん
どのお家にも需要があると思われる、のれんとして手ぬぐいを活用する方法です。
枠に押しピンなどで固定してもいいですし、つっかえ棒を通せるように端を縫ってあげれば立派なのれんに早変わりです。
絶妙な長さなので、戸やドアなどに使えば取っ手部分にはかからない程度の高さで収まりますし、小窓くらいならちょうど全て覆ってくれるので、使い勝手は良好です。
◆ファブリックパネル
「ファブリックパネルを飾りたいけど好みの柄が見つからない!」と嘆かれている方に非常にお勧めです。
お好みのサイズの発泡スチロール(平たくて四角系にできればなんでもいいですが、一番軽くて成形しやすいので)を包み、裏を安全ピンや押しピンで固定してしまえば完成です。
さらに完成度を増したいのであれば、裏に薄い木の板かシートなどを貼れば完璧でしょう。
「もっと本格的にしたい!」ということであれば、専用の木製パネルと吊紐、金具のセットがAmazonにて1,000円程度で販売されていますので、こちらもお勧めです。
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◆タペストリー
ざっくり言えば布製の掛け軸です。中世ヨーロッパで盛んに用いられていた、貴族御用達のオシャレアイテムですね。
こちらも同じく、好みの柄の手ぬぐいがあれば非常にお手軽に作ることができます。上下に木の棒を付けて、その棒にひっかけるための紐をくくりつければ完成なのですが、上下の木の棒と固定するのが少し加工が必要です。苦手な方はそれ用のセットがAmazonにて販売されていますのでこちらを活用しましょう。
こちらもワンセットで1,000円に満たないため、サクッとお気に入りのタペストリーを作っちゃいましょう。
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上記に挙げた用途以外にも、ブックカバーやお弁当袋などまだまだ活用方法はありますので、気になられる方はまた調べてみてください。
ここまで手ぬぐいの特徴や活用方法について述べてきましたが、最後にご自身でオリジナルの手ぬぐいを製作される場合の注意点をいくつかご紹介します。
レレカで製作される場合はもちろん、どこでつくる場合でも共通する可能性がある部分ですので、検討材料としてお読み下さい。
手ぬぐいで用いられる印刷方法は大きく分けて3つです。
◆染め
手ぬぐいといえば染め物というイメージの方も多いと思います。
染めの特徴は「味のある出来栄え」です。滲みや濃淡などによって、1枚1枚が同じ仕上がりにならない点がオリジナリティを演出してくれます。
染め方にもよりますが、一般的なプリントでは表現できない裏にも通る染め方や、難しいグラデーションにも対応します。
後述のプリントスクリーン印刷ではグラデーションができないため、検討の材料になりますね。
また、費用面も特徴があります。
染めの場合も型(染め/印刷ともに使うハンコのようなもの)を使って色を入れますが、何色使うとしても1つの型のみで表現できます。
顔料によるプリントは1つの色に対して1つの型を用意する必要があるため、複数色の印刷になればなるほど型の製作費と製作期間が必要です。
特にこの型代は製作費の中で占める割合が大きいため、多色刷りは染めのほうが安くなる場合も十分あります。
デメリットは、細かいデザインが苦手ということです。
注染はその字の通り、デザイン通りにくり抜いた枠(版)に染料を注ぐことで色をつけます。それにより独特の味が出る一方、滲みや細かい色分けができていない箇所が必ず生じます。
そのため線が細い・柄が細かいデザインでは潰れてしまう可能性がありますので、デザインの作成も気をつける必要があります。
また、油性顔料などと異なり染料の耐久性はそこまで高くないため、漂白剤を使うと色落ちしてしまう場合もあり、あまり強力な洗い方はされないほうが良いでしょう。
◆顔料によるシルクスクリーン印刷
こちらは染めとは異なり、インクを版から透過させる事によって印刷する「シルクスクリーン」という技法です。
染めの説明で少し触れましたが、布地などに印刷される場合に広く利用されている印刷方法です。
シルクスクリーン印刷のメリットは、機械による印刷ができるため、出来上がりが綺麗で一定なところです。
印刷方法を簡単なイメージで説明すると、ハンコを押すように印刷します。
その版もデジタルのデザインを綺麗にトレースして作れるため、イメージしたデザインが思い通りに印刷されるという点もメリットでしょう。
また機械を用いる印刷の中では、比較的ランニングコストが低いため、ある程度の枚数があれば価格が低くなるのは嬉しい点です。
デメリットは染めの裏返しになっており、にじみやゆらぎといった「味」を表現しづらい、グラデーションの印刷ができない、多色刷りだと版代が多くかかってきてしまうという点があげられます。
このような違いがあるので、業者の方に相談しつつ、ご自身の予算と要望に近い方法を選ぶのが良いでしょう。
※反応染めに関して
先ほど挙げたメリット・デメリットは本染め(注染)と言われる本格的な染めの方法を用いた場合の記述です。
業者によっては『反応染め』という記述を目にしますが、これは『反応染料という染料を用いたシルクスクリーン印刷』です。
レレカでは手ぬぐい以外でもオリジナル製品を作っていますが、そういった布バッグなどに印刷する際に用いるのがこのシルクスクリーン印刷です。
シルクスクリーン印刷だからこその良さも存在しますが、染めを期待して依頼しても出来上がってくるのは「染めっぽい雰囲気の材料を使った普通の印刷」です。
お値段は抑えられますが、特別味がある仕上がりにはなりませんのでご注意下さい。
印刷は多色刷りになればなるほど、それぞれの色での印刷精度が求められます。
多色印刷の場合、例えば黒/赤/青の3色でデザインが構成されているとしたら、まず黒の部分のみを刷って、次に赤、最後に青という風に、それぞれ単色のハンコを順番に押すように印刷します。
そのうち2色が隣り合わせになっている部分などがあった場合、うまく擦り合わせないと隙間ができてしまい、下地がでてしまいます。
理由もなく目立つほどずれてしまうようなことはあまりありませんが、万全を期すという意味で、生地は印刷しやすい生地を選ぶべきでしょう。
そのため、手ぬぐいで言えば「総理・文生地」よりも目が細かく滑らかな「岡・特岡生地」の方が多色刷りに向いています。
余談ですが、日本手ぬぐいではなく「手ぬぐいタオル」を製作する際は、より気をつけた方が良いです。
手ぬぐいタオルは日本手ぬぐいと異なり、生地が起毛状になっているため、非常に印刷しにくいです。
色数が増えるほど色ごとの余白や被りが増える上、業者ごとの技術差が出やすいのも懸念点です。
もし、手ぬぐいタオルで多色刷りを行いたい場合は、多色刷り向けの「シャーリング加工」という加工を施した生地を手ぬぐいサイズで注文する方法が望ましいです。
シャーリング加工とはタオルの生地のうち、表面部分を半分をカットすることで起毛ながら平らな表面を擬似的に作り出す加工で、通常のタオル地に比べてかなり印刷が乗りやすくなります。
タオル地にこだわりがあれば、シャーリング加工で製作できる業者を探されることをお勧めします。
最後にロットと価格の関係についてです。
手ぬぐいに限った話ではなく、オリジナル印刷を行う上で特に悩まれるところかと思います。
過去にオリジナル製品を注文された際に、予想以上に多い枚数でないと製作を依頼できなかったという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
こちらは製造や印刷にかかるイニシャルコストが関係しており、固定費を賄う最低限の価格が決まってしまっているためです。
例えば、1枚あたりに素材と印刷が100円かかる商品があったとします。こちらを生産するために最低限必要な機械の運転費用や型代がイニシャルコストとして3万円かかるとします。
この条件で10枚と100枚というロットで比較した場合、
枚数は倍の数を製作しているのにも関わらず、費用はほとんど変わりません。
このような価格だと魅力的な価格だと感じていただけないので、そもそも「100枚〜しか作れません」という風にご案内せざるを得ません。そのため最低ロットが設けられております。
ところがこの最低ロットは印刷方法によって大きく異なります。例えば、機械にかかる費用が半分なら?版の費用が半分なら?という風に、イニシャルコストは印刷や製造の手法次第なのです。
そのため少し印刷方法の項にも書きましたが、ざっくり手ぬぐいで用いる印刷方法それぞれの特徴は以下のとおりです。
以上の3つに気をつけていれば、ご予算の範囲内で最大限ご要望に合う手ぬぐいが作れると思います。
今日まで手ぬぐいを持ったことがなかった方も、このコラムで少しでも興味をお持ちいただけましたら嬉しい限りです。
レレカでもオリジナル手ぬぐいの製作は可能ですので、上の説明ではわかりにくかったところや、他のご質問などがあれば、ぜひお気軽にご質問ください。
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それではよい手ぬぐいライフを!